舞台『おおきく振りかぶって 夏の大会編』、東京公演の9公演を観てきました!
この記事では、「原作ファン」の目線で、良かった部分も気になった部分も忌憚なく、ばっさりとレビューしています。
初演との比較、および、キャス変等で複数キャストがいるキャラについては俳優さんの比較を含みますのでご了承ください。
「振りステ観に行けなかった」という方の参考になれば幸いです。
キャラ別でのレビューはこちら↓
◆イベント情報
- イベント名:舞台『おおきく振りかぶって 夏の大会編』
- 公演期間:【東京公演】2018年9月6日~9月17日【大阪公演】2018年9月28日~9月30日
- 開催場所:【東京公演】サンシャイン劇場【大阪公演】梅田芸術劇場
- チケット料金:一般観戦シート7,500円(税込)、特別観戦シート9,000円(税込)
◆はじめに
当然ですが、脚本家による解釈→演出家による解釈→俳優による解釈という、たくさんのフィルターを挟んで原作を作り直した「舞台化」なわけです。5年10年と自分好みのフィルターを被せてきた原作ファンとしては、動揺する部分もありました。
この記事でたくさん「解釈違い」という言葉を使いますが、批判ではないことはあらかじめご理解いただけますと幸いです。
初演のレビューを先にお目通しいただくと、この記事も読みやすくなるかと思います。
◆総括
初演同様、原作を大事にした進行で、ストーリーの大きな改変はありませんでした。
時事問題として不安だったラフプレー問題もそのまま描かれ、「原作通りに、ラストには放置」されています。200点満点の締め方だと思いました。
キャラ改変が気になることもありませんでした。と言っても、それは俳優さんがキャラに寄ったのではなく、原作ファンであるこちら側が、舞台(2.5次元)というコンテンツに慣れただけです。アドリブもそれなりにありましたが、演劇として許容できるようになった、というのが正しいかもしれません。
◆舞台セットについて
初演と異なる点として、実況ポジにマイクがついていました。
亀井さん(西広役)の実況を何より優先して聞いている身としては、生声の方が臨場感あって好きですが、マイクが付くことのマイナスポイントは無いし、声がかき消されることもなくて、良い改善だと思います。
弱点を上げるなら、実況ポジから打者に向かって声援を送るときにマイクに声が入ってしまうことです。公演初日はこれが頻発していて、7日以降は実況の台詞以外はマイクから顔を離すように気をつけてる姿が見られました。
逆に、ウグイス嬢ポジはマイクがあった方がよりアナウンス感が出て良かったです!マイクの位置が低いところにあって、澤田さん(篠岡役)が中腰になりながら声を出していたのが、健気でした。
◆ダンスについて
オープニングは告知通り「青春ライン」。そしてエンディングではなんと「ありがとう」が流れました!これはサプライズですよね?少なくとも私は青春ラインを踊るよとしか聞いていなかったので、あの展開の最後にありがとうが流れた瞬間、ぶわっと涙が溢れ、既に緩んでいる涙腺に追い討ちでした…!
オープニングダンスですが、曲の1番が西浦、2番は他校と和さんとロカさんが踊り、間奏で再度西浦が出てきます。
ここがすごくかっこいい演出になっています!西浦が雛壇の上(スコアボードの前)で三橋を筆頭にして勇ましく立ち、他校勢がその下の舞台手前から西浦の方を仰ぎ、佐倉役が西浦に向けて腕を掲げて宣戦布告する、というような構図です。
今回は西浦側が「追われる」「狙われる」立場という演出がかっこよかったです!文字じゃ伝わらないですが、ここ本当にめちゃくちゃかっこいいです!
ちなみに11日の公演ではタイさんの被っていた帽子が落ちるというハプニングがあったのですが、それをすかさず大地がさもダンスの振り付けのように拾い、しばらく持ったまま踊っていました。右手で持っていたのに右腕を上に翳す振り付けのときは左手に持ち替えるという手品のような芸当もこなし、ポジションチェンジのときにさっとタイさんと受け渡しておりました…!
なお、栄口役のみダンスシーンは袖にはけます。サビと間奏だけ出てきます。
◆本編について
*導入
「もうひとり投手が欲しい!」のシーンからスタートです。
(※15日のアフタートークにて判明したのですが、実は初演公演はここまで含める予定で当時から稽古をしていたそうです。前回は時間の都合で涙のカットだったとのこと)
原作だと栄口のセリフである「マウンド取られちゃうとか?」「おお、あたりっぽーい」は水谷のセリフになっていました。
「追って追って飛びついて捕れたら、すっごく気持ちいいんだよ!」のシーンは、猪野阿部と典阿部で差がありました。典阿部は何も動かないけど、猪野阿部はモモカンのセリフがはじまると袖に入り、わざわざプロテクターをつけてキャッチャーフライを取りに来ます。そこで猪野阿部は田島と絡んで演劇らしいアドリブを入れますが、典阿部の場合は原作通りに物語が進行していきます。
猪野阿部と田島の絡みは、
- キャッチャーフライを取って色っぽいキメ顔をする(確かにおもしろいんですが、阿部というキャラは崩壊しています)
- プロテクターを田島につけてやる(阿部は防具を袖に返すタイミングがないので、アドリブでもこうやって機転を利かせるんだなと感心しました)
- 田島に「キャッチャーフライ取りたい!投げて!」と言われ、めんどくさそうにボールを袖に投げて「雑ぅ!!」と言われる(これはキャラ崩壊もなく原作ファンとしても楽しめるアドリブでした!)(投げたボールが何かに跳ね返されて袖から返ってきちゃうというプチハプニングが頻発しましたが、それすらも笑いに変えていました)
*ロカさん登場
場面転換し、和さんとロカさんのシーン。
ファミレスではなく公園(たぶん)のベンチで会話が繰り広げられます。ロカさんが「話が済んだらファミレス行こう、なんでも食っていいぞ、1500円までならな」というセリフを言うことで、原作ファンにも違和感のない構成に仕上がっていて感動しました!おかげで和さんの「妙な特技」は発揮されませんでしたが笑。
「久しぶりだな和己」「ちわす」と挨拶をしながら拳を合わせた後、謎のハンドアクションが始まるがぐだぐだで続かない、という小ネタが入ります。
ロカさん「はじめてやるもんな!」というオチまで。さすが舞台での笑いの取り方がうまい!と感服しました。
ロカさんって怖いイメージばかりが先行していますが、「1500円までならな」の笑顔、「一口くれ」、「バカばっかじゃん!」、「キンニクデブ!」「ミセカケゴリラ!」など、意外とユーモアのある大学生なんですよね。だから多田さん(ロカ役)のこういった小ネタも、大学生のロカさんとしてのイメージを崩さないです。
別キャラの方と比較してしまいますが、猪野さんのアドリブは「自分」をネタにしてるから違和感があります。多田さんのアドリブは俳優ファンも原作ファンもみんなが喜べるネタだと感じます。
*崎玉観戦
球場に着いて、いの一番にベンチに座った田島と花井が、真夏だからベンチが熱くなっているという設定で「ぅぉあっちぃ!」と跳ね上がる小ネタが非常にかわいいです。田島の隣に立つ西広が毎回びくってなるのも含めてナイスなファンサービス小ネタでした!
沖が「大きな声にビビる」という話をするシーンも、猪野阿部と典阿部で違いがありました。
典阿部は「てめー嘘ついてなんか意味あんのかーーーっとぉ…」
猪野阿部は「てめー嘘ついてなんか意味あんのか……かっ…!」
これはそれぞれ良さがあり、どちらも良かったと思います。
「そっか声でけーのがいけなかったんだ」と、阿部が沖の手を握ってありがたがるのですが、このとき、舞台進行の都合上、篠岡が二人の前を歩いていきます。
典阿部はスッと篠岡を避け、顔も見ずに、即座に三橋の隣に座り一緒に観戦。
猪野阿部は沖と篠岡に絡み続け、三橋に呼ばれてようやく座って観戦を始める。
これはさすがに猪野阿部の解釈違いが甚だしいです。阿部が女子と絡んで三橋に呼ばれる?それはもうおお振りという作品の土台が崩れているとも言えます。
*崎玉戦
先攻後攻を決めるじゃんけんで、タイさんと花井のじゃんけんの掛け声がかみ合わない小ネタがあり、かわいいです。
花井が「やっべー阿部に後攻取って来いって言われたのに」と焦るシーンで、阿部が袖から出てきて「てめー絶対後攻取って来いよ」と言うのですが、ここでも猪野阿部は「猪野広樹」を全面に押し出してくるアドリブをします。俳優ファンとしては楽しいと思いますが、原作ファンの私は阿部というキャラが崩壊してていて冷めます。それに比べて典阿部くんの誠実さよ…!
試合内容は問題なく原作通りです。
花井の葛藤の描き方、すごくよかったです。初演でも絶賛しましたが、花井役の白又さん、本当に声も見た目も背格好も花井にしか見えないので、アニメを別角度で見てるような気分でした。
田島の「2打点じゃん!次、最後にしてやろーな!」もすごくよかったです。このセリフのときの一色さん(田島役)すごく「本物」でした…!
初演と同じく舞台には「コーチャー」という概念がないため、西広の「オレも進めてしまいました」のセリフがカットされました。原作だと西広と水谷が揃ってモモカンに報告をするのですが、水谷が一人で「行けると思って…」と反省していたのがちょっと不憫でした笑。
崎玉の「スクイズ防げた!」のところ、内野のみんなが「ナイピッチー!」をやった瞬間、「あ、わたし崎玉のこと応援したい」って雷が直撃したみたいな衝撃でした。初日から千秋楽まで失速することなく、今回の舞台で上位に入るくらい大好きな場面です。
また、崎玉戦では和田のオジさんとロカさんもスタンドで観戦しているるのですが、この2人も目立たないところで遊んでいてほっこりでした。
*練習パート
原作では電車の中での会話「敬遠は三橋がダメだからじゃない」「オレは大事にされているんだ」をグラウンドでやって、「ノースローだかんな」に繋がる構成になっています。
田島のスイカネタもありました。
- 「三橋、阿部、逃げろー!」の声で田島がへばりながら登場
- 田島が翼をくださいの替え歌を歌いながら登場
の2パターンあり、どちらもめちゃくちゃおもしろかったです。少し口出しするなら、原作では田島のやったことはモモカン本人に知られていませんが、舞台だとモモカン本人の前でやっていて、「それは何の真似?田島くん」と言われてしまう点でしょうか。それもギャグとして成立したから気になるほどではありません。俳優さんの演技力ありきのネタですね。
篠岡の練習レポートは、初演公演と同じような感じですが、猪野阿部のアドリブが酷かったです。
みんなが綱登りやバスケ(のジェスチャー)、柔軟などをやるのですが、猪野阿部はそれをやらずに固まる(?)というアドリブを、11日あたりからやりだしました。
最後に「以上、野球部マネージャー篠岡千代がお送りしました♪」と言った後、篠岡が続けて、「そして二日後」というナレーションをするのですが、そのときの言い方が猪野阿部と典阿部で2パターンあります。
猪野阿部のときは、猪野阿部と田島が篠岡にくっ付いて、ブルゾンちえみWithBのようなフォーメーションであごを突き出し流し目で「そして、二日後。」と色っぽく言います。何もかもキャラ崩壊ではありますが、この3人がこういうポーズを取ること自体は美男美女のお戯れで目の保養でした。
そして典阿部のときは、典阿部は絶対に篠岡に近付かないので、田島と篠岡の2人だけで、「そして、二日後☆」と明るく言います。とってもかわいらしいし、こちらのほうがまだ篠岡らしさがあります。
とはいえ、この練習レポートはそもそも原作にないシーンを舞台演出上作っているものなので、原作ファンが口を出すことではない気がしています。あえて「俳優ファンへのサービスタイム」としてやっているのでしょうね。
*美丞観戦
モモカンの歳を聞く場面で、花井が謎の妄想をはじめるのは本当に意味がわからなかったです。これって成井さん演出でしょうか?さすがにちょっとドン引きしました。
簡単に言うと、「モモカンとの年齢差が7歳だから…それってつまり、モモカンにあずさ♡って呼ばれて、やめろよ部活中は花井って呼べよ、みたいな関係がありえなくないのでは?」という妄想です。
これはさすがに原作ファンとして文句をつけさせてもらいます。花井が『モモカンとの妄想』をするのは否定しませんが、『梓って呼ばれてデレデレする妄想』をするのは非常に解釈違いです。
花井は「梓」という名前で呼ばれるのを嫌っているキャラクターですよ。モモカンへの感情も、尊敬と憧れのようなもので、もちろん「対女性」としての意識はしていると思いますが、明確に恋とは名言されていません。
西浦対港南の試合を美丞が観戦するシーンも描かれました。
篠岡だけウグイス嬢ポジに残るのですが、わらわらとひな壇に上がってきた美丞のみなさまと丁寧にご挨拶していて微笑ましかったですね。1公演だけナンパみたいなことされていました。美丞ならやりかねないのでこれはアリなアドリブです。
そして、まさかの阿部隆登場!サプライズです!和さん役の加藤さんが兼任です。
「きょうもナーイスピッチーン!だったねー!」の声量が芸人さんのようなおもしろさでした笑。
電話のアドリブも最高におもしろかったですし、猪野阿部のアドリブも最高でした。
西浦勢「だれだれ?」「このおじさんだれ?」
猪野阿部「…おとうさん。」
\似てるーーー!/
猪野阿部「似てねーーーよ!!オレに失礼だろ!!」
ここ何回観ても笑ってしまいます!
舞台ではおお振りの特徴のひとつである「家庭」の面がまったく出てこないので、ここでせめて阿部父を出せたのは良かったと思います!
ちなみに典阿部は原作らしく「父親。」と答えます。「オヤジ」呼びじゃないところが大変すばらしいですね。キャラ解釈がバッチシです!騒がしくする西浦勢を黙らせるのにダチョウ倶楽部するのもおもしろかったです!
また、「オレ友達いるよな?」のシーンもここで再現されました。典阿部は普通にセリフを言うだけでしたが、猪野阿部はポケットにガラケーを仕込んできていて上手いなぁと思いました。スマホじゃなくてガラケーっていうのがすばらしいですね。猪野阿部のアドリブ力が光るシーンでした!
*美丞戦
原作を丁寧にしっかり舞台化してくれました。猪野阿部のアドリブもなく、ずっぽりと深く深く、おお振りの世界に没入できました。
阿部の怪我、西広の打席、捕手の田島、三橋の決意、栄口の緊張、結末を知っていてもドキドキハラハラが止まらなくて、どんどん気持ちが盛り上がってきて、西浦のみんなの心臓の音や乱れた呼吸が聞こえてきて心が痛かったです。
倉田の話も、(試合が終わった後のことはカットされましたが)試合の中でしっかり描かれていて、美丞の視点も大切にした構成になっていました。
その分、西広の「サード越えるよ!」や水谷の米のくだりがカットされるなど、省略されている部分も多くありますが、本当に納得できる構成でした。
栄口がにやあっと鹿島にケンカ売る打席は、「栄口がフォアボールで出塁!」とダイジェスト実況されたのみで、鹿島とのやり取りはカットされましたが、打席に立っている副島さん(栄口役)がにっこり笑顔になったので、それを表現してくれているのかな?と思いました。
再びの栄口の打席で鹿島が「さっきは引っかかったけど、すっこんでろ」って栄口から三振を取るシーンも、舞台では「三振!」と実況されるだけで終わってしまうのですが、その三振だけ島野さん(鹿島役)がやけに気合を入れて「っしゃあ!」とガッツポーズするので、やはりそれを表現してくれているのだと思いたいです。
三橋の「と、まれぇ!」のシーンも、舞台上ではスイングについて言及されず普通にボールとして扱われてフォアボールになるのみなのですが、西銘さん(三橋役)、わずかにバット振って戻すような素振りをしたような気がします。勘違いだったら恥ずかしいですが笑。
西広の打席も原作通りです。
夏大編が舞台化するにあたって、西広の打席についての要望を別の場所に書いたのですが、
- 西広の三振シーンは、スローモーションじゃなくて、当たれ、当たってくれ!バシン!美丞大狭山の勝利!わー!挨拶行くぞ!礼!という小気味よいテンポで、西広のことを置いてきぼりにする感じでお願いします。ほんとお願いします。
- それから西広が泣くのは挨拶終わったあとでお願いします。演劇仕様にするにあたって色々制限もあるだろうけど、西広は絶対に絶対にバッターボックスでは崩れ落ちないので、お願いします。
- 泣くまではこの世の終わりみたいな顔しててくださいお願いします。現実を受け入れる時間がじわじわと来る感じです。
概ねこの通りになってくれて大大大満足です!
花井が西広の肩を叩いて立ち上がらせるのも、田島が西広の猫背を直すのも本当に素晴らしいです!!
モモカン「学校戻って練習するよ!」
西浦「はい!」
で、SunsetSwishの「ありがとう」が流れ出し、みんなでクールダウンをする……という締め方になっています。
もう、田島のキャッチャーあたりから涙目で、西広の打席で涙が頬を伝っていたというのに、ありがとうが流れ出した途端、完全に決壊しました。
素晴らしい素晴らしい、本当に素晴らしい締め方でした。
最後、田島がヘルメットを篠岡にかぶせるのもすばらしいアドリブです。
◆まとめ
大満足の!
大満足の!
大満足なステージでした!!
せいぜい涙がうるうるするくらいだろうと高を括っていたのですが、まさか頬まで涙がつたうほどに泣くとは……原作を知っているのに…。
とにかく締め方が最高です。西広の打席だけでなく、田島が防具背負ったあたりからラストまでの流れが本当に本当に素晴らしかったです。
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