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【考察】笠原真樹『群青戦記(グンジョーセンキ)』レビュー スポーツ強豪校の高校生がタイムスリップ!ラストはどうなったのか?戦国に残った人は誰?【ネタバレあり】

笠原真樹『群青戦記(グンジョーセンキ)』の考察・紹介記事です。
映画「ブレイブ」の原作ですね。
全17巻と少々長いので、手を出しづらいと感じるかもしれません。
気になっているけど買おうか迷っている、という方の参考になれば幸いです!

 

群青戦記 グンジョーセンキ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

 

 

◆作品情報

  • タイトル:群青戦記 グンジョーセンキ
  • 著者:笠原真樹
  • 連載開始:2014年
  • 掲載雑誌:ヤングジャンプ(集英社)
  • ジャンル:歴史、戦争、タイムスリップ、ヒューマンドラマ

 

◆舞台設定

主人公の西野とその幼馴染…だけじゃなく、「生徒」「教師」そして「校舎」「設備」丸ごと全部トリップしちゃうところがこの作品のミソですね。

トリップした現代人の中でも派閥ができたり、意見衝突したり。必ずしも一枚岩ではない主人公サイドのドラマが見られます。

主人公・西野蒼は現代でうだつが上がらない「3軍」です。

歴史オタクで弓道部なので「戦国時代なら1軍になれるのに」という妄想を日頃からしていました。

その妄想が現実になったのに、校舎ごと大勢で来ちゃったから、戦国時代でも現代社会のカーストから逃れられないという誤算がおもしろいです。

物語が進むにつれカーストの頂点に立つことになりますが、もしタイムスリップしたのが西野一人だったら、逆にこうはならなかっただろうなと思えてしまうところもまた皮肉が効いていますね。

この舞台設定のおかげで、現代でまったく関わりのなかった・共通点のない・カーストの上下関係だった生徒たちが、学年を超えて友情を築いていくというヒューマンストーリーがこの作品の最大の魅力です。

 

群青戦記 グンジョーセンキ 6 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

◆史実が変わっていくおもしろさ

史実が変わっていくという展開が非常に良かったです。

現代人の存在×秀吉が教科書を読んで未来を知る×不破という黒幕。
この掛け合わせで、ただの歴史漫画ではなくなっています。

トリップしてしばらくの間は、西野が歴史の知識で無双するのですが、秀吉や不破の企みによって段々と史実とズレていき、西野の知識だけでは勝てなくなっていくんですね。

史実に沿わせたり、逸脱させたり、修正したり。それぞれの目的もわかっているので、「あの陣営はこう動くはずだ」「ここは相手も史実通りにしたいはずだ」という読み合いが起こります。

また、死なないはずの人が死んだり、いないはずの人物が戦に参加してたり、戦の時期を早めたり、いろいろ変わっているけど最後には辻褄を合わせていく感じがパズルのようでおもしろいです。

 

◆タイムスリップの謎

タイムスリップというと大体トラックに轢かれるのが定石ですよね笑。

しかしこの作品は校舎ごとという大掛かりなタイムスリップなので、なかなかちょっと無理がある感じなのは否めません。

このタイムスリップは呪術的なものであり、人為的に引き起こすことができる現象です。

呪術なのはいいんですが……、赤い雨、蝉、濃霧といった摩訶不思議な要素になんの意味があったのかは最終話まで説明されていません。

考察するならば、赤い雨はあの土地でたくさんの血が流れたという表現なのかもしれませんが、ただ恐怖心を煽るための演出という可能性も高いです。

 

◆西野蒼の魅力

短髪黒髪カースト低め男子×弓矢×知識×戦略。

要素盛り盛りで絶対にかっこいい主人公です。

現代では遠慮がちで気弱な面もありましたが、戦国時代に来て覚醒しました。

タイムスリップしてきたばかりで混乱の中、今浜城では秀吉に交渉を持ちかける等、若干脅し気味なところもあって策士です。

現代の西野はひとりぼっちだったのに、戦国時代の西野の隣には誰を置いてもしっくり来るあたりが、もう武将として大成していますよね!

西野に控える高橋。西野の右腕戸田。西野を補佐する吉元。西野の理解者秀吉。西野の成長を見守る半兵衛。西野に助言する義継。西野を支える先輩ズ。西野を認める半蔵さん。西野の生き甲斐になる凪さん。そして敵対する運命を感じながら西野と共闘する石田三成!

あらゆるキャラクターは西野を通じて魅力的になりますね!

 

群青戦記 グンジョーセンキ 10 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

◆吉元萬次郎の魅力

マッドサイエンティスト風な初登場でしたが、割とすぐに化けの皮が剥がれて「ただの科学が得意な高校生」になりましたね。かわいい。

テストでケアレスミスもするし、戸田に点数負けて嫉妬もする。本当に普通の男の子です。かわいい。

前田慶次戦の回想に出てきた現代の吉元は、目にハイライトがあり、マトモな思考回路で、平凡な特進クラスの生徒でした。

この子が戦国時代で目ぐるぐるさせながら戦に出たのかと思うと、愛おしさが溢れます。

戦を離れて現代に戻る方法を探す別隊でも現代と同じ表情に戻り、

「そんな非科学的なこと信じるか!ぼくは科学者だ!」

(笠原真樹『群青戦記(グンジョーセンキ)』)

と心強いシーンを見せてくれます。スポーツ強豪校には珍しい頭脳派という立ち位置が魅了的なキャラクターですね。

今浜城で火薬庫に陣取ったところも、自爆するんじゃないかってドキドキしました。

直前まで科学が王様だー!と頭イカれてる風だったのに、戦の目的は見失っていなくて、状況を理解していて、「ここで…指示を待つ」で飾るの、かっこよすぎませんか?

「王様だー!」「ひれ伏せー!」と言うわりに他人に対してフラットなものの見方をしており、「脳筋どもめ」と悪態つきますが、吉元が周囲の力を頼りにしてる光景に嫌味を感じません。

マッドサイエンティストではなくノーベル賞を狙うただの「化学バカ」なところが非常に魅力的です。

ノーベル賞を目指す理由が「誰も病気で死なないために新薬を作る」というまっとうな目的なのも素敵ですね!

 

◆戸田義章の魅力

戦国時代に順応しすぎていて吉元とは真逆で高校生らしくないキャラクターですが、このキャラクター性がとにかく素晴らしい。作者さんの漫画力の恩恵を受けて光ったキャラだと思います。

戦う姿がサマになっており、野暮ったくない。使用武器も派手でかっこいいし、サイコな表情や彼の過去、緒方の眼鏡も含めて「戦いに挑む姿勢がかっこいい」と誰しもが思うでしょう。

また、戦闘時と非戦闘時のギャップも魅力です。

非戦闘時はほとんど喋らず、張り付いた笑顔で浮いていて、大体誰かにおんぶされていて、小動物っぽい。日常の場面では緒方とのコンビでギャグ担当です。

なのに戦闘時は前衛特攻型で魅せる立ち回り!突然真剣な表情で「指図するな」、「そこでおとなしくしてろ」、「手を貸せ吉元」等と強気な命令口調!そこに緒方との絆ですよ。そりゃあ女子ウケが良いのも納得です。 

こんなにサイコパスなのにこんなに人情あるキャラを描かれるのは本当に作者の力だと感じました。

 

群青戦記 グンジョーセンキ 13 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

◆3年生ズの魅力

戦国時代において先輩という役回りが現代とは違うため、この作品の「先輩キャラ」は、一般的な先輩とはまた別の魅力を持っています。

現代なら西野のことなんか相手にもしなかっただろうに、戦国では後輩の西野を信じ、買って、立てて、大将として支えてくれる。その心強さは計り知れません。

中でも成瀬さんが途中で戦死してしまったことが衝撃でした。

下級生メインの集団に混ざり、群れないけど協力的で、死んだ親友のために戦い続ける………彼が主人公で良かったのではというくらいキャラが立っていましたよね。

成瀬さんは、戦死していなければ戦国に残る側だったと思います。

 

◆信長と蘭丸の関係

作中で名言はしておらず、読み手の知ってる史実(俗説)から妄想を掻き立てさせる描写に留まっています。

あからさまに男色的な解釈はさせず、蘭丸の登場シーンを読み返したら気付くレベルです。

この采配はとても良いと思いました!

 

◆心残りな点

メインキャラ以外にも場外で活躍してる人たちがたくさんいて、だから星徳軍は強いぞ!という演出なのかもしれませんが、女子柔道部っぽい子と女子体操部っぽい子の活躍も見たかったです。

槍投げやハンドボール部の人たちもほぼ出番なく終わってしまって残念です。

打ち切りにならなければ活躍していたのかもしれませんね。

 

群青戦記 グンジョーセンキ 16 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

◆最終回で戦国に残った人物は誰?

ラストで戦国時代に残されたのはこの6人だと考察できます。

・西野→確定
・菱沼→屏風を描いている男。確定
・吉元→白衣の男。確定
・戸田→二刀流の男。確定
・相良→蹴りで戦っている男。確定ではないが自信あり
・白附→馬に乗っている男。確定ではないが自信あり

相良と白附だと思う理由については次の段で解説します!

 

群青戦記 グンジョーセンキ 9 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

◆残された者の天命

吉元は戻りたいと言っていましたが、戻れなかったようですね。

なぜかと言うと、吉元の本当の目標は優香ちゃんを救うことだからです。現代に戻っても優香ちゃんはいません。彼の天命とは、この時代に残ることで薬学を発展させることです。

戸田は現代より戦国の世の方が本人の性格的に合っており、適性があります。現代に戻っても虐待されるため、戦国に残る方が戸田にとっても幸せですね。

相良も初登場時、「戦国時代に来たことはまさに天命。オレの名を刻む」と堂々発言しているので、残るのはおかしくないと思います。

そして白附ですが、髪型(色)と口元が似ているのと、後述する点からも白附で間違いないと考えています。彼は現代に恋人がいたしカーストも低くないので、父の居合に理解を示した今、帰っても良さそうですけどね。

 

相良と白附だと確信する場面があります。

それは、本能寺の変の前夜のシーンです。

ここでは、高橋・藤岡ペアと、西野・白附・相良という異色トリオでの語らいがそれぞれ描かれています。

高橋・藤岡の会話は、「本当なら今頃プロリーグで活躍している」「母親宛の手紙を書いた」という現代への未練です。

男泣きする高橋の肩に手を置いて真っ直ぐ視線を揺るがさない藤岡には、「絶対に現代に帰る」という意志を感じます。そして明朝、覚悟を決めた高橋は手紙を破り捨てます。

この二人は心の底から、現代に帰るという目的のために、本能寺の変に挑みます。

 

一方、西野・白附・相良の3人は、「あの信長を相手にすることで、死ぬかもしれない」という不安を語っています。

彼らが泣いているのは「死にたくない」という感情からくるものであり、現代への未練については一切触れていません。

初見時、「決戦前の決意表明という大切なシーンなのにあまり絡みのない3人だなぁ」と不思議でしたが、今思えば「帰らない人物」の伏線のようにも思えます。

このシーンがあるから最終話で顔が見えない人物は彼らなんだろうと確信しました。

 

◆他の人たちは現代に帰れたのか?

タイムスリップの呪術で濃霧に飲まれた高橋が、見知らぬ土地で意識を取り戻し、飛行機を見て泣くシーンがあります。

「あ、現代に帰れたんだ」と思いますよね。

しかし、明らかに現代の旅客機のシルエットではありません。

頭にプロペラがついていて、羽根が平行。断言します。あれは戦闘機です。

 

つまり、考えられる筋は2つあります。

  • ①史実を変えたことで、「現代」は戦争をしている。
  • ②現代には帰れず、昭和あたりの戦争時代に転送されてしまった。

個人的には、後述する理由からも、①の説が有力だと感じています。

もしも②だった場合は、正直つらいの一言ですね…。

高橋は「母への手紙を書く」という行動をしており、「ここで死ぬならオレだ」と他の人より強く死を覚悟しており、アメフト部で、戦国に来てからも盾持って突っ込むタンク役でしたから、ある意味、特攻隊としての適性が高いのかもしれません……。

 

群青戦記 グンジョーセンキ 17 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

◆ラストの能面の男は誰?

おそらく不破です。

安土城で堀に落ちた不破が、死なずに生きていたのだと推察されます。11巻で不破の死体を確認せず、「仕留めたか」と榊原さんに言わせるだけという構成でしたので。

そして、織田の家臣には初期からずっと能面の男がいましたが、不破が途中からそいつに成り代わってたのだと思います。

不破と組んでいた叡僧も千利休に成り代わってたことから、この成り代わりも突飛な話ではないかなと思います。

 

◆ラストの首桶は何?

おそらく信長の首です。

あの首桶が誰の首なのかは描写されていませんが、信長を討った帰りに直接校舎まで来ているので、信長の首である可能性は非常に高いです。

能面の男に成り代わっていた不破が、機を窺って、邪蛇に信長の首を落としたのだと考察できます。

 

◆能面の男は何をした?

首桶=信長の首を、邪蛇の岩に落としました。

これが何を意味するかと言うと、信長が別の時代にタイムスリップしたのだと考察できます。

 

そもそも不破と木本は、西野たちより先に戦国時代に来ていました。

この二人は現代で自殺したことになっており、「邪蛇の岩を狙うように頭から落ちた」と刑事が語っています。

「邪蛇に頭を落とす」という行為は、「その人が別の時代に行く」ということになります。

 

つまり、不破は、信長の首を邪蛇に落とすことで、信長を別の時代にタイムスリップさせたのだと思います。

その結果、①現代でも戦争が起きている。または、そういう世界線のパラレルワールドができた。

 

安土城で、不破は西野に「信長を討たないと帰れない」と言いました。

おそらくこのときから不破は、自分の目的のために「信長を別の世界に送る」という手段を考えていたのではないでしょうか。

西野に信長の首を討つよう唆し、虎視眈々とそのときを待っていたのではないかと思います。

 

◆まとめ

歴史に詳しくない方でも楽しめる漫画です!

映画「ブレイブ」とはシナリオはまったく違うようなので、原作として楽しめると思えたら買って損はないと思います!

 

群青戦記 グンジョーセンキ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)