阿賀沢紅茶『氷の城壁』のメイン4人のキャラ紹介記事です。
『氷の城壁』の特徴は、何と言っても内面が魅力的な4人のキャラクターですよね。
彼女たちの過去エピソードや背景を知ると、物語の中で彼女たちがなぜこのような考えに至ったのか、なぜこのような発言をしたのか、という部分がとても丁寧に描かれています。
この記事では、そんな4人を掘り下げて紹介します!
氷の城壁 単行本版【フルカラー】 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
◆作品情報
- タイトル:氷の城壁
- 著者:阿賀沢紅茶
- 出版年:2023年
- 掲載雑誌:Web媒体(集英社)
- ジャンル:高校生活、青春ドラマ、恋愛、友情
◆小雪について
●キャラクター
クールではあるんだけどお高く止まってるわけではなく、本来の気質は対人関係に難があるわけでもない。クーデレヒロインとして完成され尽くしたキャラクターです。
中学時代に部活内で揉め事があり、作中のように人付き合いをあえて避けるようになりました。
揉め事の原因は「部活の人間関係」で、とてもリアルに描かれています。
その人間関係も小雪はなんとか良い関係を築こうと気を遣っていました。熱川とも五十嵐とも、最初は仲良くなるつもりで交流をしていました。ただ、性格的に彼らとソリが合わなかっただけです。
性格が合わない人たちと一緒にいることが苦痛になり、だんだん嫌悪感が増すというあたりが、人間臭くてリアルなエピソードですよね。
●バックボーンから伝わる小雪の魅力
しかし、小雪が高校で他人と関わるのをやめた理由は「中学でいじめられたから」ではありません。ここが小雪の最大の魅力です。
小雪は中学時代、熱川や五十嵐に“やり返した”過去を抱えています。
被害者でもあり加害者である小雪だからこそ、「煤になる」「換気を手伝う」という思考や表現ができるのですね。
その寄り添いがヨータやミナトの心を救うことになりますが、小雪がなぜそんなドンピシャなアドバイスを言えるのかというバックボーンがしっかり伝わってるため、小雪が決して「都合よく相手が今欲してる言葉がわかる乙女ゲーヒロイン」ではないことがわかり、読者は小雪を好きになります。
氷の城壁 単行本版【フルカラー】 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)
◆美姫について
●キャラクター
高校という新しい環境に来て、第一印象で「女の子らしい」というパブリックイメージを持たれてしまい、本当の自分を曝け出せない葛藤を抱えてしまったキャラクターです。
本当はガサツで豪胆な性格、B-BOYなファッションが好きな美姫は、本音で話せないクラスメイトと徐々に距離が空いていきます。
中学時代、いじめられていた小雪を助けようとしてガラスを割ってしまうという傷害事件を起こしたことがあり、そんな本来の自分を高校の友人たちに知られることを恐れていました。
小雪には「クラスメイトに本当の自分を理解してもらわなくてもいい」というスタンスで美姫を励ましていましたが、美姫は「みんなのことが好きだから、ちゃんと話したい」と正面からぶつかっていきます。
過去に向き合い、現在のイメージにも抗い、美姫は自分の力でクラスメイトと和解していきます。
●ヨータとミナトとの関係性が素敵
弟とも仲の良い美姫は、ロックやバイクといった男趣味の方が話が合います。
そのため、ヨータとミナトとも性別を越えた友情を築いてきました。………と、美姫は思っていました。実はヨータは美姫のことを異性としてずっと好きで、ミナトはそんなヨータの気持ちを知っていました。
それを知った美姫はヨータに騙されたという気持ちを抱き、嫌悪感を示します。が、次第に自分の気持ちに気付いて、今度は自分からヨータに告白する!とがんばります。
このように何でも自分から打開していくところが美姫の魅力ですよね!
ミナトとは一貫して男女の友情が成立しており、非常に尊い関係性です。自分のボケに相手がノったとき軽々しく「好き」って言いあえる男女、とても素敵です。
氷の城壁 単行本版【フルカラー】 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)
◆ミナトについて
●キャラクター
ノースフェイスの派手パーカーが似合う整い顔、陽キャでコミュ強で人気者で末っ子気質という性格、「感情(ココロ)の動きって要は脳(アタマ)でしょ」という頭でっかちな論理。
「よかれと思ってやってきた八方美人が自分を苦しめる」というテーマのキャラクターです。
奔放な兄が家族と折り合い悪そうにして荒れているのを間近で見てきたミナトは、誰にも嫌われない処世術を身につけ、1人でいる人たちを「かわいそう」と思い、気にかけるようになりました。
気にかけてあげると、家族の中で孤立していた兄もクラスで浮いていた同級生もみんなミナトに感謝してくれたので、これは良いことなのだという親切心から、高校でぼっちだった小雪に構い始めるのです。
また、自分のエゴを突き通すより人に合わせる方が簡単という考え方のため、告白してきた女の子に「じゃあ付き合う」という選択を取ってしまいます。
二股はしませんし、ちゃんと大切にはするですが、両想いで付き合ったわけではないため女の子の不満を溜めやすく、ミナトは必ず振られる側になります。
ミナトから振ることは今までありませんでしたが、小雪のことを好きだと自覚した以降、そのとき付き合っていた桃香に初めて自分から別れを告げます。
●みなこゆを至高だと思える理由
小雪とミナトのキャラクターが素晴らしいからというのも理由のひとつですが、何よりも2年生進級後の両片想い期間をがっつりミナトのエピソードとして展開させた阿賀沢紅茶の手腕があると思います。
本の貸し借りをするエピソード、周囲に漏れ出ちゃってる両片思いなふたり最高ですよね……。
読者は桃香と付き合ってるときのミナトをがっつりと見てきたため、小雪と付き合った後のグイグイデレデレなミナトが描かれることの相乗効果もあると思います。
あとこれは阿賀沢紅茶の腕前の素晴らしさですが、小雪に対する想いを自問自答するミナトの表情とセリフの組み合わせがとても良く、読者に刺さっている気もします。
「綺麗な感情だけじゃなくなってきた」であの表情になるの、アタマとココロの動きが何だってェ〜〜〜!?っていじり倒したくなるほど愛おしいですよね…!
氷の城壁 単行本版【フルカラー】 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)
◆ヨータについて
●キャラクター
背も高く性格も良く成績も良い…と、全体的に恵まれているように描かれています。ちょっとぼーっとしていることがあるのも「落ち着いている」といる見方ができ、「優しい」「余裕がある」と見られがちです。
しかし実際には、再婚した両親とその間に生まれた弟たちに囲まれて、自分の存在価値について頭の中でずっと考えてしまうため、「何も考えるな」と自分に言い聞かせて1人でもがいているキャラクターです。
阿賀沢紅茶がすごいなと思うのは、ヨータも自覚している通り「恵まれている」ところです。
「親が再婚して家に居づらい」という設定だけ聞いて家庭環境が悪いのかなと思いきや、ヨータの家庭は真逆なのです。優しい継母、自分を気にかけてくれる父親、慕ってくれる弟妹、経済的にも裕福。このバックボーンがあり、なお悩んでいるからこそ、ヨータは優しいんですよね。
●美姫への秘めた想い
中学時代から美姫に想いを寄せていました。ミナトには即バレでしたが美姫当人には完璧に隠し通しました。(美姫が鈍感)
美姫が自分とは友情を望んでいることを知っており、自分の恋を叶えるよりも美姫の幸せを願うという聖人です。
隠し倒すつもりでしたが体育祭の片付け時にちょっとしたアクシデントがあって気持ちがバレかけたため告白に至りました。ここで有耶無耶にしなかったところも美姫への誠意が感じられます。
美姫に告白するときちょっと男出してきたのが今までの分溢れ出た感ありますね…!めちゃくちゃ色気出してきました…!
そして、一度振られても変わらず友達として接し続けるところに「美姫が望む形(4人一緒)を維持する」という覚悟が感じられます。
……と言いたいところですが、そもそも美姫に告白するつもりがなく、付き合うビジョンを持っていなかったようなので、これは覚悟とは違うのかもしれませんね笑。
後日美姫から逆告白を受けたときに「両想いのその後」がわからなかったためミナトにヘルプを求めています。純愛すぎる。
◆まとめ
作品を通して、彼らがこういう家庭環境・こういう過去というところを矛盾なく描いており、だから彼ら彼女らはこういう性格・こういう考え方の人間になっているんだという説得力が凄まじいですよね。
この漫画の評価の高さにも納得です。
4人のキャラがいかに魅力的で、『氷の城壁』がいかに深い漫画であるか伝わったら幸いです。
本当に何度読んでも幸せな気持ちになれるので、Webコミック全話課金したファンにこそ、単行本も買ってほしいです。
ちなみに単行本とwebコミックでは、コマ割り以外にもミナトのセリフ等細かいところが修正されていますよ!
氷の城壁 単行本版【フルカラー】 14 (ジャンプコミックスDIGITAL)