森恒二『自殺島』の紹介記事です。
タイトルから、近年よくあるパニックホラーやいじめ等の胸糞・殺戮系漫画というイメージを持たれた方も多いのではないでしょうか?
しかし実際は、「生きるために生きる」というテーマで登場人物たちが心を通わせ成長していくサバイバルドラマとなっています。
この記事では、自殺島とは一体なんなのか、主人公たちがなぜ自殺島にやってきたのかを、どんなストーリーなのかを含めて解説します!
タイトルからは想像できないかもしれませんが、こんな方にぜひ読んでほしいです!
- 人生に絶望して生活を投げ出したい
- 希望や未来のある読後感を味わいたい
- サバイバル漫画を楽しみたい
- 年齢や性別や出身等の垣根を越えた大人の友情を読みたい
◆作品情報
- タイトル:自殺島
- 著者:森恒二
- 出版年:2008年
- 掲載雑誌:ヤングアニマルコミックス(白泉社)
- ジャンル:サバイバル、アクション、バトル、青年向け
◆自殺島とは一体なんなのか
・生きるための島
端的に言うと「自殺に失敗した者が生きるための島」です。
決して「自殺させられる島」のような殺戮系の漫画ではない点に注意が必要です。
・「自殺島」は通称
そもそも、自殺島とは正式な名前ではありません。作中のインターネットで生まれた通称です。
正式名称は「自殺未遂常習者隔離目的特別自治区」です。
もともとは無法島と呼ばれており、島流しされるのは「自殺未遂者」ではなく「凶悪殺人犯」でした。無法島時代の話は、同作者による後続作品『無法島』にて描かれています。
ダイビングショップや商店、学校、民家等があり、無法島になる以前は一般的な南の島だった描写があります。
◆なぜ自殺島にやってきたのか
・自殺島で生きるという矛盾
そもそも自殺に成功していれば、主人公たちはこの島にやってくることはありませんでした。
この島に来た彼らは「自殺志願者」である一方で「自殺未遂者」であり、心の底では生にしがみついていたと言えます。
序盤には、島に来てから命を絶ったモブに対して劣等感を抱いている描写や、飛び降りをしようとするけどできない描写が丁寧に描かれています。これはどちらも生への執着です。
・自殺島はむしろ生きやすい隔離環境
主人公・セイのようにサバイバル生活で生きる理由に気付いた者や、ケンやリュウ、レイコのように絶望の種となっていた経済問題や家族問題から離れたことで死ぬ意味もなくなった者は、比較的早いうちから、自殺島でのサバイバル生活に順応していきます。
特に経済問題が原因だった者にとっては、借金から解放されてむしろ生きやすいという考えもあるようです。
家族からの性虐待が原因のリヴ、自身の性同一性障害が原因のトモなどは、心の傷が癒えるまで惰性で生きるような描写がありますが、島で出会った仲間たちとともにトラウマを乗り越えていきます。
◆どんなストーリーなのか
・自殺問題は前半のみ
3巻くらいまでは、主人公・セイが「死にたかったのになぜ僕はまだ生きているのか」と自問自答し、サバイバル生活を経てその答えを見つける話です。
その後、食料をめぐった人間同士のイザコザがありますが、6巻くらいまででセイたちの集落はほぼ安定的にサバイバル生活に順応します。
7巻以降はもはや自殺未遂者という肩書きは失われ、自給自足が安定し、ちょっと原始的なキャンプ生活と呼べるくらいに集落が発展していきます。
カイが必死に「君は自殺志願者だったはずだ」と自殺教唆をするくらいには、皆生きる力を取り戻しています。
・中盤は人間社会の縮図
8巻以降はカイが敵対陣営に回ったことで、陣営同士の抗争が1番の問題となります。
このあたりになると、多数決を取ったり裁判を行ったりと、逃げ出したはずの「人間社会」に近いことをするようになります。
セイたちは、仲間や愛する人や今の生活を守るためには戦わなければならないという決断を迫られます。
・後半は生きる喜びに包まれる
15巻で敵対陣営との抗争は一段落します。多くの犠牲を出しましたが、平和が訪れます。子供を産むか産まないかという話になります。
全員が協力してナオの出産を手伝い、祝福し、カップルが結婚式を挙げます。
もはや死という観念に取り残されているのはカイのみ。「人間は滅ぶべき」という思想から自殺教唆をしていたカイは、子を成そうとするセイとリヴに殺意を持ちます。
そんなカイとの訣別の後、政府のヘリコプターと船がやってきて「自殺島は解放された」と、突然この生活の終わりが告げられます。
しかし、誰1人「良かった」「助かった」という感情にはなりませんでした。この島で、このメンバーで、生きてきた日々があったからです。
◆ショッキングなシーンも多い
ただし注意事項として、ショッキングなシーンが非常に多いため、そういった描写が苦手な方にはおすすめできない作品となっています。
- 飛び降り、殺害
- カニバリズムを示唆する描写
- 女性を嬲る描写全般
- 性別に関する尊厳破壊
- サメ映画に分類されるホラー
◆まとめ
エピソードの濃淡の差こそあれど、登場人物は全員がそれぞれの人生に絶望してこの島に辿り着きます。
そんなキャラクターたちが必死に生きようとする様は非常にドラマ性があり、読み飽きることがありません!
全17巻と少し長いですが、人生に疲れた方、同じような生活の繰り返しで虚無感に襲われている方は、ぜひ手に取っていただきたい作品です!