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【レビュー】Cuvie『絢爛たるグランドセーヌ』10巻(YAGP編)【ネタバレあり】

10巻はマルセイユでの短期留学が中心に描かれます。

モダンバレエを中心としている学校への留学ということもあってコンテンポラリーがメインになり、奏の「ダンサー」としての質を一段階引き上げる内容となっています。

そのため、クラシックバレエを踊るシーンはほとんどありません。


また、ここから徐々に海外が舞台になっていきます。

バレエが上手いだけじゃやっていけない、個人じゃどうしようもない国政問題にも切り込んでいて大変読み応えがありますよ!

単行本を買うかどうか見極めたい方、無料分まで読んで続きが気になるという方、よければ参考にしてください!

 

rainysteria.com

絢爛たるグランドセーヌ 10 (チャンピオンREDコミックス)

 

 

 

 

◆作品情報

  • タイトル:絢爛たるグランドセーヌ(10)
  • 著者:Cuvie
  • 出版年:2018年
  • 掲載雑誌:チャンピオンRED(秋田書店)
  • ジャンル:クラシックバレエ、スポーツ、成長

 

◆平和な日本人、戦争中のベネズエラ人

コンテンポラリーやパドゥドゥの最低限の基礎のみ滝本スタジオで教わり、ついにマルセイユの地に降り立った奏。

ホームステイ先には、去年からマルセイユ舞踏学校に長期留学を始めているアンドレア・メンドーサがいました。

去年のYAGPを観ていた奏はアンドレアのことを一方的に知っています。ぜひとも友達になりたい奏ですが、アンドレアの故郷・ベネズエラは戦争真っ只中。アンドレアは家族や国のことで頭がいっぱいで、平和ボケした奏に強く当たります。


海外が舞台になり、言語の壁だけでなくこういったセンシティブな問題も取り上げられています。

そのスタンスは最新の29巻でも一貫されています。『絢爛たるグランドセーヌ』がただのバレエ漫画ではなく、非常に現実的な観点で「芸術分野全般」を描いている漫画であることがわかりますね。

しかし中学生の奏に国際的な事情がわかるわけもなく、はじめはアンドレアの考えが理解できないという描写もリアル。家族への連絡を怠る奏のことをなんとも中学生らしいと感じますが、これも日本人ならではなのかもしれませんね。

 

絢爛たるグランドセーヌ 10 (チャンピオンREDコミックス)

 

 

◆帰りたいアンドレアと帰りたくない奏

奏はアンドレアの気持ち自体は理解するものの、寄り添うことはできませんでした。

朝から晩までバレエ漬けで、周りもバレエが上手い人たちばかり。日本の中学校で「ここは自分の居場所じゃない」と感じていた奏にとって、バレエ学校は夢のような場所です。

帰りたいと泣くアンドレアとは対照的に、奏は笑顔で「ずっとここにいたい」とさえ考えます。

 

ベネズエラ出身のアンドレアはバレエより家族を選び、平和な日本出身の奏は家族や友人よりバレエを選ぶという対称性が物語性を引き出しています。実際には、アンドレアは国に帰ることができないため半強制的にバレエを選ぶことになりますが。

戦争をしている国と比べること自体がナンセンスですが、しかし、現実的に「バレエを生業にしていきたいならバレエ以外を切り捨てる覚悟が必要だ」ということが描かれているように感じます。

この時点の奏は平和な日本出身なのでバレエを選ぶのが当たり前になっていますが、これと似たようなテーマは25巻以降でも扱われており、特に29巻で強く表現されています。

本当に、ただのバレエ漫画ではないと痛感させられます。

YAGP編から海外が舞台になり登場人物が多国籍になるのですが、国ごとの特色やキャラクター性がとても上手に表現されていて、そういうところもこの漫画が好きな理由です!

 

絢爛たるグランドセーヌ 10 (チャンピオンREDコミックス)

 

 

◆日本人独特のリズム?

ガレル先生のクラスレッスンで「音をよく聞いて」と注意されることが多い奏。思い返せば、YAGP日本予選でガレル先生からもらった講評コメントにも「音楽をよく聴いて、音とリズムを感じて」と書かれていました。

さらに、ジャズのクラスでも別の先生から「ドラムの拍に乗れていない」と指摘が。

いまいちピンとこない奏ですが、不思議に思いながらも教わった通りビートを身体で刻むことを意識してみると、徐々に「音に乗る」という感覚がわかってきて、音楽と一体になって「気持ちいい!!」と感じることができました。

 

これは、単純に奏の苦手克服として描かれただけかもしれませんが、2026年3月に公開された『パリに咲くエトワール』というバレエをテーマにしたアニメ映画で日本人特有のリズム感を指摘されていていたのと同じなのかもしれません。

『絢爛たるグランドセーヌ』ではあくまで「奏が正しく音に乗れるようになった」という表現しかされていませんが、海外の学校で矯正されたという点を考えると、同じ問題だったのかなと推察しています。

 

正しく音に乗れるようになったことでディアナのバリエーションも一段とレベルアップを果たした奏。

マルセイユ舞踏学校に大変魅力を感じ、「ここにいたい」と強く思うのでした。

…というところで10巻は終わります。

 

アビーに誘われたロイヤルと、自分の色に合っているマルセイユ、どちらが良いのか決めかねている様子ですね。

ここからどんどん加速度的におもしろくなっていきますよ!!ぜひ読んでほしい漫画です!

 

絢爛たるグランドセーヌ 10 (チャンピオンREDコミックス)